私たちはこれまで、文芸(出版)翻訳(以下、文芸翻訳)と“検定”とはなじまないものだと考えていました。
基本的に正確な訳出が肝要な技術翻訳と違い、文芸翻訳には原語と同等の、あるいはそれ以上の母国語(日本語)の表現能力が不可欠です。しかも、翻訳である以上、技術的な力量が問われることも事実です。それも、卓越した表現力に直結した技術力が。そのような能力をどう“検定”すればよいのか。文芸翻訳検定が成功するか否かは、その表現力と技術力をうまく掬い取れるかどうかにかかっていると言えるでしょう。
この文芸翻訳検定の目的は、知識の量ではなく、理解力を測ること、そして仕事に結びつけることです。
当検定は高校レベルの5級から、第一線のプロに匹敵することを保証する1級まであります。1級にはAとBの2つのレベルを設けました。これは長編の翻訳をお任せできるレベルかどうかを、より正確に判断するためです。したがってAは文句なくプロレベルですが、Bはそこに至るまであと一歩のレベルとなります。各レベルを客観的に評価し、Aレベルに達した方には、当協会が責任をもって仕事を提供できる環境を整えます。
この度(2019年5月)、文芸翻訳家の柴田元幸氏が、1級Aの審査に加わってくださることになりました。心強いかぎりです。皆様のふるっての参加をお待ちしております。
文芸翻訳家・文芸翻訳検定審査委員長 山本光伸
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